低気圧の日に眠いと感じる人はいます。ただ、気圧の低下だけが眠気の原因だと言い切れるほどの根拠は、今のところそろっていません。天気が崩れる日には、気圧の変化に加えて、外が暗くなる、外に出る機会が減る、気温や湿度が変わる、雨や風の音が気になる、頭痛などの体調の変化が起こる、といったいくつもの変化が同時に起こるためです。
自分の眠気に何が関わっていそうかを知るには、天気と体調を一緒に記録して見比べるのが手がかりになります。この記事では、天気が崩れる日に起こる変化と、気圧について分かっていることを整理したうえで、記録の付け方と、低気圧の日を無理なく過ごす工夫を紹介します。
この記事の目次
今日つらいときは、まず三つだけ
強い眠気があるときは、運転や危険な作業をいったん避けることを優先しましょう。そのうえで、前夜に眠る時間が足りていたかを確認し、日中は明るい場所で無理なく過ごします。休める場合は午後の早い時間の短い仮眠も選択肢です。天気の分析を終えてからでなければ休めない、ということはありません。
天気と体調の記録は、落ち着いたときに振り返るためのものです。気圧予報が悪いから必ず不調になると構えず、その日の眠気や体調を見て予定を調整してください。
「低気圧の日」には、気圧以外の変化も同時に起きている

気象庁は「低気圧」を、天気図の上で周囲より気圧が低く、閉じた等圧線で囲まれたところと定義しています。私たちがふだん「低気圧の日」と呼ぶのは、多くの場合、低気圧や前線の影響で天気が崩れた日のことです。そうした日は、気圧が低いだけでなく、暗い、雨が降る、蒸し暑いまたは肌寒い、といった条件が重なった日でもあります。
状況に合わせて、最初に試すことを選んでみましょう。
| 天気が崩れる日に起こること | 眠気との関わりについて分かっていること | 記録で見るポイント |
|---|---|---|
| 気圧が下がる、変化する | 気圧の変化を耳の奥(内耳)が感じ取る可能性が動物実験で示されている。眠気との関係はまだ分かっていない | 気圧の値と、前日からの変化 |
| 外が暗い | 目覚めた後の眠気は強い光で減る。暗い日は朝に強い光を浴びにくい | 朝に窓際や屋外で過ごしたか |
| 外に出る機会が減る | 天気の悪い日は体を動かす時間が減りやすいという調査がある | 外出したか、歩いたか |
| 気温や湿度が変わる | 寝室の湿度と眠気の感じ方の関連を示した研究がある | 寝室の温度・湿度 |
| 雨や風の音 | 突然の大きな音は、眠っている人を目覚めさせやすい | 夜中に目が覚めたか |
| 頭痛などの体調の変化 | 痛みや不調は、眠りや日中の過ごし方に影響しうる | 症状の有無と時間帯 |
天気の悪い日の眠気を「気圧のせい」とひとまとめにせず、この表のどれが自分に当てはまりそうかを分けて考えると、できる工夫が見つかりやすくなります。
気圧の変化は、体にとってどのくらいの差なのか
天気の気圧変化と、山の上の気圧を比べる
気圧は「ヘクトパスカル(hPa)」という単位で表され、標準大気圧は約1,013ヘクトパスカル、つまり約1気圧です。これは比較の基準であり、住んでいる場所の実際の気圧は標高や天候で変わります。天気による変化と、高い場所の気圧を比べると次のようになります。 〔参考2〕 〔参考3〕
状況に合わせて、最初に試すことを選んでみましょう。
| 場所・状況 | 気圧の目安 |
|---|---|
| 比較の基準となる標準大気圧 | 約1気圧(約1,013ヘクトパスカル) |
| 1気圧から20〜40ヘクトパスカル下げた実験条件の換算例 | 約0.96〜0.98気圧 |
| 高度約2,000m付近(標準大気を用いた概算) | 約0.8気圧 |
| 富士山頂 | 約0.6気圧 |
高い山では、気圧が下がることで体が取り込める酸素が少なくなり、平地に住む人では高度2,500m付近から、頭痛やめまい、嘔吐、疲労、夜中に目が覚めるなどの高山病の症状が出ることがあります。一方、天気による気圧の変化は、それよりずっと小さい変化です。また、空気中の酸素の割合は高度に関係なく約21%で変わりません。「低気圧で酸素が減って眠くなる」という説明を見かけることがありますが、少なくとも高山病と同じ仕組みで説明するのは難しいと考えられます。
気圧の変化を感じ取る仕組みの研究
気圧の変化を体がどう感じ取るかについては、動物を使った研究が進んでいます。マウスを使った研究では、気圧を1,013ヘクトパスカルから40ヘクトパスカル下げると、内耳から届くバランス感覚の情報を受け取る脳の神経(前庭神経核)が活動することが報告されました。天気の変化の範囲に収まる20ヘクトパスカルの低下で、内耳の情報を脳へ伝える神経細胞が反応したという報告もあります。
これらは主に、天気の変化と痛みが悪化する関係を調べるための研究です。気圧の変化が眠気を引き起こすことを示したものではありません。天気の変化と関連して起こる不調は「気象病」や「天気痛」と呼ばれることがありますが、眠気との結びつきは、まだ研究途上の分野です。
「低気圧で副交感神経が優位になる」という説明について
低気圧の日の眠気は、「気圧が下がると自律神経のうち体を休ませる副交感神経が優位になり、眠くなる」と説明されることがよくあります。ただし、この仕組みを人で直接確かめた研究は、この記事の調査では見つかりませんでした。考え方の一つとして知っておきつつ、自分の眠気が本当に気圧と連動しているかは、記録を手がかりに、睡眠時間などの条件も一緒に見比べてみましょう。記録だけで原因を確定することはできません。
人を対象にした研究から分かること
人を対象にした研究では、気圧を含む環境と睡眠の関連や、天気と生活行動の関連が調べられています。これらの結果だけで、気圧より他の要因が重要だと順位を付けることはできません。62人の寝室の環境を14日間測った研究では、寝室の気圧と睡眠効率との統計的に有意な関連は確認されませんでした。睡眠効率は寝床で過ごした時間のうち眠っていた割合であり、日中の眠気そのものとは別の指標です。一方で、寝室の湿度は、本人が感じる眠気や眠りの質の悪さと関連していました。 〔参考4〕
オーストラリアの成人368人の活動量を13か月記録した研究では、雨の多い日や風の強い日には息が上がる程度の運動の時間が減り、日照時間が長い日ほど座りっぱなしの時間が短い傾向がありました。天気の悪い日の眠気を考えるときは、こうした生活の変化もあわせて見る必要があります。 〔参考5〕
天気と体調を記録してみよう
天気と眠気の関係は、人によって違います。自分の場合を知るには、天気と体調を毎日同じ項目で記録し、あとから見比べる方法が役立ちます。ここでは、まずは2〜4週間を目安に記録してみることを提案します。雨の日と晴れの日の両方が含まれるくらいの期間があると、比べやすくなります。
記録する項目
状況に合わせて、最初に試すことを選んでみましょう。
| 項目 | 記録の仕方 | 見る理由 |
|---|---|---|
| 天気と気圧 | 天気予報アプリや、気象庁の観測データで確認する。値そのものより、前日からどれだけ変わったかを見る | 気圧の低さや変化と眠気が重なるかを見る |
| 前夜の睡眠 | 寝た時刻、起きた時刻、夜中に目が覚めたか | 睡眠不足の日と重なっていないかを見る |
| 朝の光 | 起きてから窓際や屋外で過ごしたか | 暗い朝と重なっていないかを見る |
| 日中の眠気 | 1〜5で記入(5=とても眠い、1=ほとんど眠くない) | 変化を比べやすくする |
| 体調 | 頭痛、耳の違和感、だるさなどの有無と時間帯 | 症状と眠気の順番を見る |
| 活動 | 外出したか、どのくらい歩いたか | 動かなかった日と重なっていないかを見る |
記録の例
状況に合わせて、最初に試すことを選んでみましょう。
| 日付 | 天気 | 気圧の変化 | 睡眠時間 | 朝の光 | 日中の眠気 | 体調 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1日目 | 晴れ | ほぼ変化なし | 7時間 | 駅まで歩いた | 2 | 特になし |
| 2日目 | くもり | 下がり始め | 5時間半 | なし | 4 | だるい |
| 3日目 | 雨 | 大きく下がった | 7時間 | 窓際で朝食 | 3 | 少し頭が重い |
| 4日目 | 晴れ | 上がった | 7時間 | 駅まで歩いた | 2 | 特になし |
表の内容は記入の見本です。この例の2日目には、気圧低下・短い睡眠・朝の光の少なさが同時に起きています。どれの影響が大きいかは、この4日分だけでは分かりません。睡眠時間や活動が似ている日同士でも傾向が見られるかを、無理のない範囲で見比べます。このように、記録は原因を確定するものではなく、関係しそうな条件を探す手がかりとして使います。
見比べ方と、見直す場所
状況に合わせて、最初に試すことを選んでみましょう。
| 記録から見えたこと | 見直す場所 |
|---|---|
| 睡眠時間が十分な日でも、気圧が下がる日や大きく変わる日に眠気が重なる | 天気予報を見て予定や作業の配分を調整する |
| 暗い日、外に出なかった日に眠気が重なる | 朝の光と日中の活動 |
| 天気に関係なく、前夜の睡眠が短い日に眠気が重なる | 睡眠時間の確保 |
| 夜中に目が覚めた日に眠気が重なる | 寝室の音、温度、湿度 |
| 天気に関係なく、ほぼ毎日眠い | 天気以外の原因を考え、相談を検討する |
低気圧の日を無理なく過ごす工夫

朝は、できるだけ明るい場所で過ごす
目覚めた後にしばらく残る眠気を「睡眠慣性」といいます。朝はカーテンを開け、無理なく明るさを得られる場所で過ごしてみましょう。光への反応は明るさだけでなく、時刻や浴びる時間、前の睡眠などでも変わります。「1,000ルクス未満なら意味がない」と一律に区切ることはできません。まだ暗い時間に起きる場合は照明を使い、外が明るくなったら窓際や屋外で過ごす機会を作ります。
起きる時刻は、天気に合わせて動かさない
天気の悪い休日は、ついいつもより長く寝てしまいがちです。休日に体を休めること自体は悪くありませんが、起きる時刻が大きくずれると、その夜に寝つきにくくなり、翌朝がつらくなることがあります。厚生労働省の睡眠ガイドでも、規則正しい起床時刻を心がけることがすすめられています。起床時刻だけを守って睡眠時間が不足し続けないよう、夜に眠るための時間も確保します。日中の眠気や朝の休まった感覚も確認し、不足を短い休憩だけで補えるとは考えないことが大切です。 〔参考6〕
日中は、体を動かす機会を残す
天気の悪い日は、外に出る機会が減り、体を動かす時間も減りやすくなります。日中の規則的な運動は、体内時計の調整にも関わることが分かっています。雨の日は、室内でのストレッチ、階段の上り下り、屋根のある場所での散歩など、天気に左右されにくい方法を一つ決めておくと続けやすくなります。
どうしても眠いときは、短い仮眠
日中の眠気には短い仮眠が役立つ場合があります。日勤の生活なら午後の早い時間に、まず10〜20分程度を目安にし、夕方以降の長い昼寝は避けます。これは全員の最適値ではなく、夜の寝つきと起きたあとのぼんやり感を見て調整する出発点です。目覚めた直後は眠気が残ることがあるため、すぐに危険な作業へ戻らないでください。眠気が強いときの運転は避け、安全な場所で休み、移動手段の変更も考えます。
夜は、寝室の湿度と音を確認する
蒸し暑い雨の日は、寝室の湿度が上がりやすくなります。高温多湿の環境では夜中に目が覚めやすくなり、深い眠りが減ることが報告されています。除湿機能や換気で湿度を下げる工夫をしましょう。寝室の快適さは、寝具や体質、年齢によって変わります。温湿度計の値と、蒸れ・冷え・夜中の目覚めを合わせて見て調整しましょう。
雨や風の音も眠りに影響します。音への反応は、音量に加えて音の種類や本人の状態でも変わります。一定の音だけでなく、突然の大きな音が夜間の目覚めと重なっていないかを確認しましょう。台風などで外の音が大きい夜は、窓を閉めて厚手のカーテンを引くと、ある程度音を和らげられます。
予定は、天気予報を見て配分する
記録で「気圧が大きく変わる日に眠気が出やすい」と分かったら、天気予報で気圧の変化を確認し、集中が必要な作業を別の日や時間帯に回す、移動の多い予定を詰め込まない、といった配分の工夫ができます。眠気を我慢で乗り切るより、負担のかかる予定を分散するほうが無理なく過ごせます。
天気のせいにしないほうがよいサイン
天気と眠気が重なって見えても、ほかの原因が隠れていることがあります。
状況に合わせて、最初に試すことを選んでみましょう。
| 比べる点 | 天気との関係を見ながら工夫できる状態 | 相談を考えたい状態 |
|---|---|---|
| 天気との関係 | 天気が悪い日に眠気が出やすく、晴れの日は楽 | 晴れの日も同じように眠い |
| 睡眠時間との関係 | 睡眠時間を確保すると楽になる | 睡眠時間を確保しても日中に強い眠気がある |
| 伴う症状 | 軽いだるさ程度 | 強い頭痛、めまい、耳鳴りが続く。いつもと違う激しい頭痛がある |
| 生活への影響 | 予定の調整で過ごせる | 仕事や運転に支障がある、気分の落ち込みが続く |
生活習慣や睡眠環境を見直しても眠りの問題が続く場合は、睡眠障害などが隠れていることもあります。表の右側に当てはまるときは、記録を持って医療機関に相談しましょう。記録があると、いつ、どんな条件で症状が出るのかを伝えやすくなります。なお、突然の激しい頭痛や、いつもと違う強い頭痛があるときは、記録を待たずにすぐ医療機関を受診してください。
低気圧と眠気に関するよくある質問
低気圧で眠くなるのは気のせいですか?
天気の悪い日に眠いと感じる人はいますが、それが気圧だけによるものかは、まだはっきりしていません。暗さや活動量、睡眠時間などの変化も同時に起こるため、記録で自分の傾向を確かめるのがおすすめです。
低気圧の日は酸素が足りなくなるのですか?
空気中の酸素の割合は変わらず、天気による気圧の変化は、高山病が起こる高さの気圧の変化と比べてずっと小さいものです。天気が崩れた日の眠気を、高山病と同じ酸素不足で説明するのは難しいと考えられます。
梅雨や台風の時期に眠くなりやすいのはなぜですか?
梅雨の時期は曇りや雨の日が続いて朝の光が弱くなりやすく、蒸し暑さで寝室の湿度も上がりがちです。台風のときは、気圧が短い時間で大きく変わるうえに、夜に雨や風の音が強まることもあります。こうした条件が重なるため、時期ごとに記録を見比べると、自分に関わっていそうな条件が分かりやすくなります。
耳のマッサージは効果がありますか?
気圧の変化による不調への対策として、耳のマッサージが紹介されることがあります。眠気への効果を人で確かめた研究は、この記事の調査では見つかりませんでした。気持ちよく感じる範囲で取り入れるのは構いませんが、眠気が続く場合は、睡眠時間や朝の光などの見直しもあわせて行いましょう。
雨の日は寝て過ごしてもいいですか?
休日に体を休めるのは悪いことではありません。ただし、起きる時刻を大きく遅らせたり、夕方に長く眠ったりすると、夜の眠りに響くことがあります。起床時刻はいつもどおりにし、日中の休息は時間を決めてとると、翌日に疲れを持ち越しにくくなります。
天気の悪い日こそ、頭と気持ちをゆるめる時間を
雨の日や天気が不安定な日は、外に出にくく、気分も重くなりがちです。天気を変えることはできませんが、その日の過ごし方は選べます。朝は明るい場所で過ごし、日中は少し体を動かし、夜は静かな環境で休む。そうした工夫と合わせて、画面や予定から離れて自分をいたわる時間を持つことも、天気に振り回されにくい毎日につながります。
ReSleepのヘッドスパは、頭まわりをゆっくりとケアしながら、日常から少し離れて過ごせる休息の時間です。天気が崩れて気持ちが重い日や、考えごとで頭がいっぱいになりやすい日に、心地よいケアで一息つく時間を取り入れてみてはいかがでしょうか。










「天気のせい」と決める前に、自分のパターンを記録で確かめる
天気の悪い日の眠気は、気圧、暗さ、動かなかったこと、前の晩の睡眠など、いくつもの条件が重なって感じられることがあります。だからこそ、天気と一緒に睡眠時間や朝の光、体調を書き留めておくと、自分の眠気に関わっていそうな条件が見えてきます。気圧の変化と重なるなら予定の配分で、暗さや睡眠不足と重なるなら生活の工夫で、というように、打つ手が具体的になります。記録は完璧でなくて構いません。書けた日の分だけでも、見比べる材料になります。