「睡眠は7時間が理想」――誰もが一度は耳にしたことがあるフレーズではないでしょうか。健康番組でも雑誌でも、この"7時間"という数字がよく登場します。
でも実際には、7時間以上寝てもなんだかスッキリしない人もいれば、6時間でも十分元気という人もいますよね。いったい、"理想の睡眠時間"とはどのくらいなのでしょうか?
この記事では、睡眠改善学の知見をもとに、「理想の睡眠時間」についての誤解と真実を整理していきます。ReSleepとしては、睡眠の長さだけにこだわるよりも、「眠りのリズムと質」を整えることの方がずっと大切だと考えています。
あなたにとっての"ちょうどいい眠り"を見つけるヒントになれば幸いです。
1. "7時間神話"はどこから来たのか?
そもそも「睡眠時間は7時間が理想」と言われるようになったのは、過去に行われた大規模な疫学調査の結果がもとになっています。この調査では、死亡率や生活習慣病の発症率が最も低かった睡眠時間の平均値が、7時間前後だったのです。
ただし、ここで注意したいのは、これはあくまで統計上の中央値にすぎないということ。つまり、多くの人が集まったときの"平均的な数字"であって、すべての人に当てはまる絶対的な正解ではありません。
睡眠改善学では、「理想の睡眠時間には大きな個人差があり、年齢や体質、生活リズムによって変わる」と明確に示されています。たとえば、成人の必要睡眠時間はおよそ7〜9時間とされていますが、実際には6時間台で十分な人もいれば、8時間以上必要とする人もいます。
つまり、「7時間が正解」というわけではなく、"自分にとってちょうどいい時間"を見つけることが正解なのです。
2. 睡眠時間を「短くする努力」は必要ない
忙しい現代では、「短時間睡眠でも元気に過ごせたらいいのに」「もっと時間を有効活用したい」と考える人も多いかもしれません。ビジネス書などでも、成功者の短時間睡眠がもてはやされることがありますよね。
しかし、睡眠改善学の立場では、この考え方は非常にリスクが高いとされています。
短時間睡眠を続けると、まず最初に影響を受けるのは集中力・判断力・感情の安定性です。次第に、免疫機能・代謝・ホルモンバランスにも変化が起こり、肥満や糖代謝の異常、メンタル面の不調などのリスクが高まることが知られています。
さらに、睡眠不足が積み重なると「睡眠負債」と呼ばれる状態になります。これは単なる眠気ではなく、体内の恒常性が崩れて"休んでも疲れが取れにくい"状態を意味します。一度この状態に陥ると、回復には時間がかかります。
睡眠時間を削ってまで時間を作ろうとするよりも、まずは「自分の適正な睡眠時間を知る」ことの方が、結果的にパフォーマンスを高める近道だと言えるでしょう。
3. 「理想の時間」を見つける3つのヒント
では、自分にとって理想の睡眠時間はどうやって見つければいいのでしょうか?睡眠改善学では、「日中の眠気」「気分」「集中のしやすさ」という3つの指標を基準に判断することが推奨されています。
① 朝の目覚めが自然かどうか
アラームより先に自然と目が覚める、または無理なくスッと起きられるなら、睡眠時間は足りていると考えられます。
逆に、何度もスヌーズボタンを押してようやく起きるような状態であれば、睡眠不足が蓄積しているサインです。朝の目覚め方は、体が休息を十分得られているかどうかの重要な指標になります。
② 午後に強い眠気があるか
昼食後に軽く眠くなるのは自然な生理現象です。人間の体内時計には、午後の早い時間帯に軽い眠気が訪れる仕組みがあります。
しかし、デスクでウトウトしてしまうほどの強い眠気がある場合は、夜の睡眠の量か質が足りていない可能性があります。日中の覚醒度を観察することで、睡眠が十分かどうかを判断できます。
③ 日中の気分・集中力
睡眠が足りている人は、日中の気分が比較的安定していて、注意力の低下も少ない傾向があります。
逆に、イライラしやすい、ネガティブな思考が増えている、物事に集中できない――こういった状態が続いている場合、睡眠不足の影響を受けていることが多いのです。
これらの3つの指標を、数日から1週間ほど観察してみてください。すると、自分が「自然にスッキリできる睡眠時間」が見えてきます。
4. 「寝だめ」で睡眠負債は取り戻せる?
「平日は睡眠時間が足りないから、週末にまとめて寝よう」――こんな風に考えたことはありませんか?確かに、週末に長く寝ると一時的な眠気は軽くなるかもしれません。
しかし、睡眠改善学によると、"睡眠負債"は寝だめでは完全には解消されないとされています。
なぜなら、週末の長時間睡眠によって体内時計がズレてしまうからです。日曜日に昼まで寝てしまうと、その夜の眠気が遅れ、月曜の朝に"時差ボケ"のような状態を引き起こします。これを社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)と呼びます。
体内時計は、太陽の光や食事のタイミング、活動時間などの情報をもとに、体内のリズムを調整しています。週末に生活リズムが乱れると、このリズムが崩れ、平日の睡眠にも影響を及ぼします。
本当に大切なのは、「何時間寝たか」よりも「毎日ほぼ同じ時間に寝て、同じ時間に起きる」というリズムの一貫性です。体は"時間の規則性"によって回復力を保っているのです。
5. 年齢とともに変わる「ちょうどいい睡眠」
睡眠時間は年齢とともに変化していきます。これは自然なことで、心配する必要はありません。
赤ちゃんや子どもは成長ホルモンの分泌が活発なため、長く深い睡眠が必要です。成人では7〜9時間が目安とされていますが、高齢になると体内時計のリズムが前倒しになり、早寝早起きの傾向が強くなります。
また、加齢により深睡眠(ノンレム睡眠の深い段階)の量が減少するため、睡眠時間そのものは若い頃より短くなることがあります。しかし、日中に強い眠気がなく、心身が安定していれば、それは「足りている」と考えられます。
つまり、"長く寝られない=悪い眠り"とは限らないのです。大事なのは、「必要な分だけ眠れて、日中に心身が安定しているか」という点です。
6. 睡眠の「質」を決めるのは"時間"だけじゃない
睡眠時間が十分でも疲れが取れない場合、原因は睡眠の質にあるかもしれません。
睡眠改善学では、質の良い睡眠の条件として、次の3点が挙げられています。
- 睡眠のリズム(入眠・中途覚醒・起床時刻の安定)
- 睡眠の深さ(深部体温の低下と脳の十分な休息)
- 心理的な安心感(リラックスして眠りに入れる状態)
このうち③の「心理的な安心感」は見落とされがちですが、非常に重要な要素です。
「眠れないかもしれない」「明日の仕事が不安」といった焦りや緊張は、交感神経を刺激し、眠りの深さを浅くしてしまいます。自律神経は、交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)のバランスで機能しているため、心が落ち着いていないと、体も休息モードに入りにくいのです。
だからこそ、寝室環境を整え、安心して体と頭を休められる空間を持つことが、理想の睡眠に欠かせない要素となります。
7. 眠りの"環境"を整えることも、理想の睡眠の一部
多くの人が「睡眠時間」だけを気にしますが、実は「眠るための環境づくり」こそが、質を底上げする重要な要素です。
寝室の温度、光の明るさ、香りや音、寝具の触感など――小さな要素の積み重ねが、脳と体を"休息モード"に導きます。深部体温がスムーズに下がり、副交感神経が優位になることで、自然な入眠が促されるのです。
ReSleepでは、睡眠の質を高めるために、「頭と神経をゆるめる」環境を整えることを大切にしています。ヘッドスパのように、頭部や首周りの深部の筋緊張や血流を整え、自律神経のバランスをやわらかく切り替える時間を持つことは、睡眠の"質のスイッチ"を押すようなもの。
「眠るために整う」という感覚を体で思い出すことが、理想の睡眠時間を支えるベースになっていきます。
まとめ:あなたの「ちょうどいい眠り」を見つけよう
"理想の睡眠時間"に絶対的な正解はありません。大切なのは、「朝に自然と起きられる」「日中に強い眠気がない」「気分が安定している」――その3つがそろっているかどうかです。
7時間という数字に縛られすぎず、自分の体の声に耳を傾けてみてください。もし最近、眠りが浅い、疲れが取れにくいと感じているなら、まずは生活リズムを少し整えるだけでも変化が出てくることがあります。
そして、「眠ること」自体をもう少しやさしく扱ってみるのも、ひとつの方法です。睡眠は、毎日積み重ねていくものだからこそ、無理なく続けられるリズムが大切になります。
ReSleepは、"眠りを整える体験"を通して、「自分は眠れる」という安心感を取り戻すお手伝いをしています。睡眠時間を数値で測るだけでなく、"眠りの心地よさ"を感じる夜を、少しずつ増やしていきましょう。








